開拓者の家は、建築家の設計に従い、施主が1人で10年以上の歳月をかけて、少しずつ完成させた住宅です。石山修武氏の初期の代表作の1つ。
石山氏は細部までデザインし、それを施主はさまざまな道具を用い、一人で作り続けました。すべての部分を素人の手で作り上げたのです。この計画は、石山氏の代表作幻庵(1975年)の直後に始まっています。幻庵の鉄細工は熟練した職人の手によるものですが、開拓者の家はすべて素人の施主が試行錯誤しながら作ったものです。 これら二つの住宅の主構造は、コルゲートパイプを使用したものです。コルゲートパイプとは、通常は土木構造物などに使用されますが、安価で大きな空間をつくることができ、素人でも簡単に施工可能なものだそうです。そのようなコルゲートパイプの内部を、必要に応じて壁や床を造り、空間を作っていきます。石山氏の言葉によれば、これは工業化時代の小屋作りということです。工業化時代の合理的な技術を使用し、自分の家を自分でつくることを実践している事例です。比較的コストを把握しやすい工業製品を使い自力建設することで、非常に透明なつくり方になっています。また、既製品では実現できない自由な造形を実現しています。これは、住宅は購入するのがあたり前になった現状や、住宅の生産体系への痛烈な批評性をもっています。しかしながら、莫大な時間とエネルギーがかけられており、このようなことを実践できる人は限られるのが現状で、批評性はあるけれど、追随者はあまり生まれていないのではないでしょうか。
by h_tanabe1212
| 2006-01-23 23:59
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